『令和の中学受験 保護者のための参考書』(矢野耕平)のレビュー
2021年2月21日(日)。
2月17日に出版されたばかりの新刊です。
・『令和の中学受験 保護者のための参考書』(矢野耕平/講談社+α新書/990円)
先ほどAmazonから届きましたので、早速読みました。中学受験業界には偏ったプレーヤーや筆者が多いのですが、矢野氏は極めてまっとうなことを書いています。結論としてお勧めです。新小1-6で中学受験を考えている御家庭は一読すべきかと思います。
■戦記君の着目点:
=quote=
p.20:保護者世代が経験した「昭和(あるいは平成初期)の中学受験」と、わが子が経験する「令和の中学受験」では、さまざまな側面で変化が生まれているのです。とりわけ私立中学校の序列は当時とはずいぶん様相が違います。
p.33:第1章 中学受験向きの子、不向きな子
p.34:神奈川県の有名男子校進学校で教鞭を執る友人と食事をしていたとき、彼からこんな問いかけがありました。「(割愛)毎年のことだけれど、中学校1年生の夏休み明けには、学力が『伸びる子』と『落ちる子』に二極分化する。どうしてそうなるのか?両者の違いって分かる?」(割愛)その私の回答に彼は頷きました。「そう、全くその通り。子どもべったりの親は本当に困るんだよねえ」
p.40:学力差はいつから生まれるか
p.45:国語が得意な子の「家庭環境」。それでは、保護者がわが子にどのような環境を用意すれば、中学受験勉強を順調にスタートすることができるのでしょうか。(割愛)国語を得点源とする子の幼少期に共通していたのは次の点です。
①保護者とたくさん会話をしている。
②絵本がたくさんあり、保護者からそれらの読み聞かせをよくしてもらっている。
③家庭が新聞を購読している。
p.78:共学校の中学入試では堂々と「女子差別」が行われている。(割愛)共学校の中学入試では大半の学校に「男女格差」が生じしているのです。(割愛)男女の入学者数をほぼ同数にしたいと考えると、どうしても男子よりも女子のほうの全体的な得点が高く、「調整」することが必要になってくるからっです。(割愛)大手の模擬試験の結果を分析すると、学力のトップレベルに相当する層(偏差値70以上)は男子のほうが占める割合がかなり高くなる一方、学力上位層・中位層(偏差値45以上70未満)は女子の占める比率が高くなります。そして、学力下位層(偏差値45未満)では男子の占める割合がやや高いのです。
p.83:これと関連しますが、「進学校に通学すれば塾通いは要らない」というのはウソに近い言説です。新学校の在校生たちは高校生にもなれば、塾・予備校通いを始めるのがいたって普通です。
p.104:それでは、吉祥女子と頌栄女子学院の大学合格実績(表A)を見てみましょう。(割愛)吉祥女子で国公立+早慶上智に現役で進学する生徒は38.4%です。(割愛)一方、頌栄女子学院で国公立+早慶上智に現役進学するのは53%。学年で真ん中の成績であれば、これらの大学に進学できる実力があることを意味します。(※戦記注:このあと、文系・理系、帰国子女の扱いがあり、データの読み方の分析の話が継続します。)
p.109:私はその学校の本質を見きわめたいのであれば、普段の学校の様子を見に行かれることを勧めています。たとえば、登下校の際の在校生たちの表情や身振り手振りを観察するだけでも、「どんな教育が施されているのか」を垣間見ることができますし、良くも悪くもその学校の意外な一面を発見できるかもしれません。
p.119:最近は小学校1年生、2年生から塾通いを始めるケース、いわゆる中学受験の早期化が進行しているように感じています。
p.125:塾のブランドに意味は無い
p.155:塾は子どもを合格させられない。誤解を恐れずに申し上げると、塾はお子さんの成績を伸ばすこともできなければ、合格させることもできない・・・そういう存在なのです。どうしてでしょうか。「教育」とは「子が、『自ら教わり、自ら育つ』ように周囲の大人たちが働きかけること」であり、「やる気スイッチ」なるものがあるのだとすれば、そのスイッチを押せるのは子ども自身しかいないのです。
=unquote=
■戦記君の視点からのコメント
①中学受験の低学年化にもある程度踏み込み、p.49では「準備に出遅れたらどうするか」ということにも筆を割かれています。令和時代に起きていることを冷静に見つめて、それへの対処法が展開されています。著者の一環した主張としては、「子どもは親や塾にべったり頼るようではダメで、自立しないと中学入学後に大変なことになるよ」と理解しましたが、正当な意見だと思います。
②矢野氏はスタジオキャンパスという中規模塾の経営者なので、大手塾の良い点や悪い点についても客観的に分析しています。戦記君から見てちょっと残念だったのが、以下について分析していない点です。
a)サピックス校舎満杯問題。「東京23区ではサピックス人気が異常なレベルで高まっており、新小1の時点で入塾しないと、そもそも満杯で入れない状態が2020年に勃発した」くらいは書いておいて欲しかったですね。。サピックスは子どもとの相性が最も問われる塾だと僕は思いますので、今から3~4年後に、転塾を余儀なくされるお子さんがかなり発生すると思います。
b)低学年からの積み上げ先行者の存在。小6サピックスα上位には不思議なことに中学数学(代数)がスラスラできるお子さんが結構いるのですが、これらのお子さんは公文なりなんなりで、低学年時代(=新小1)から地道に努力を積み上げてきており、新小4から通塾を開始したお子さんはそれらの先行組と競争をすることになる、くらいは分析しておいた方が良いかと思いました。まあ、数学だけではなくて、英語もそうなのですが、今時中学受験を持てる力の100%で戦う時代ではなくなっている、というのがリアルタイムで小6サピックスの保護者としての意見です。
c)インターネット上の情報の扱い方。ブロガーなり掲示板なりで情報があるなかで、「情報の取捨選択」や「情報の活用方法」について、令和時代っぽく解説をして頂きたかったです。ブロガーの情報発信力が馬鹿にならないので、そのようなノイズ(=戦記君もノイズだと思いますが)への対応方法についても意見をお伺いしたかったです。
③とはいえ、「意図的に書いていない」こともあろうかと思いますので、この点勘案をしても『令和の中学受験 保護者のための参考書』が良書であることは間違いありません。一読することをお勧めします。矢野氏に取材を申し込みたいですね。
・・・表紙イラストから読み取れることが結構多くて、茶目っ気たっぷりですね。
★現時点の立ち位置:
・資源配分比率:中学受験90%、中学入学後10%
①公文:数学K20・国語K100で冬眠【2020年1月から】
②公文:英語JI/上位10%【2020年12月8日から】
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