認定NPO法人カタリバさんとの対談:①教育機会の格差「コロナ発生で困窮世帯の課題がどう変化したのか」

2022年01月(新中1)

2022年1月29日(土)。

 

2022年組の中学受験もいよいよフィナーレを迎えます。

 

しかし、現在の日本を俯瞰してみると「中学受験をしている」のは一部の恵まれたお子さんに過ぎません。満足な教育機会を得られていないお子さんが多数いらっしゃる、というのが現実です。

 

僕は娘の中学受験を通じて「教育の機会格差」の問題が深刻化していることに気が付いたので、2020年2月のコロナ危機勃発を契機にカタリバさんへの寄付を開始しました。カタリバさんのVisionに共感したからです。

 

 

 

 

 

僕がカタリバさんと出会ってから2年が経過しました。この2年間の総括として、カタリバさんと対談の機会を頂くことができました。全3回シリーズにて、「2022年組の中学受験の裏で、今の日本に起きていること」をお伝えしたいと考えます。

 

 

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戦記:「こんにちは!zoomでの対談のお時間を頂き、ありがとうございます!」

 

三箇山さん:「いつもお世話になっております!戦記さんは、私たちが想像していたよりもお若く見えますね!」

 

戦記:「いえいえ、もうかなりのオジサンでございます(笑)。」

 

三箇山さん:「以前、カタリバのグリーティングカードをブログでご紹介頂き、ありがとうございました。またグリーティングカードを送らせて頂く予定です。今日は、カタリバの中島も同席させて頂くことにしました。中島は、全国の困窮世帯の保護者とお子さんを支援するプロジェクトである、キッカケプログラムの統括リーダーです。このプログラムは、2020年のコロナ発生後に開始しました。今日、戦記さんが対談したいテーマに、日々現場を回している中島の視点と経験がご参考になればと考えています。」

 

戦記:「ありがとうございます。まず、簡単に私の自己紹介をさせて頂きますね。私は本業は経営者系の仕事をしているのですが、その本業とパラレルする形で、「戦記」という別人格のハンドルネームで教育ブロガーとして活動しています。現在小6の娘が小1だった2016年にブログを開始しましたが、中学受験のプロセスを進めるに従い、経済格差が学力格差につながっている実態に気が付き、これらのトレンドを解決しうる方法を模索していたところ、2020年のコロナショック前にカタリバさんの存在を知りました。それより後、毎月12,000円ずつ、合計で23回寄付させて頂きました。目標は、2022年2月までの24回の寄付です。

 

中学受験のリアルな現場にいると感じるのですが、富裕層も、困窮層も、家庭環境の差に関わらず、お子さんにとって良くない傾向が発生しています。具体的には、経済的に豊かで教育投資をできる層は、行き過ぎた偏差値競争のために「教育虐待」のような形でお子さんにプレッシャーがかかり、他方経済的に困窮していて日々の生活に困っている層は「教育ネグレクト」のような形で放置されてしまっている。両極端になっています

 

中学受験でいやいや塾に行かされているお子さんからすると、教育機会を与えられない同世代のことは見えないわけです。自分の置かれた立場を分かって感謝すべきところ、これが相対的には分からないわけです。そのまま中学に進学すると、私立中学はある種同質ですから、不遇な同世代のことを知らないままに成長していくことになります。」

 

三箇山さん:「戦記さんのブログの読者の方ですと、中学受験を検討している相対的に豊かな、教育に熱心なご家庭が多いですよね。」

 

戦記:「はい。一度、ひょんなことから統計データを取れたのですが、イメージされている層が多いです。しかし、教育格差が拡大している問題は、どこかの発展途上国のお話ということではなくて、私たちが住んでいる日本の、ごく身近な問題になってきていると私は認識しています。」

 

三箇山さん:「貧困とか格差というと、海外を想像しますが、寄付者の方に数字をお見せすると「本当にこれって日本国内の数字なのですか?」と驚かれることが多いです。カタリバも海外ルーツのお子さんへの支援事業も一昨年から開始していますが、国内の課題も複雑になってきています。私たちも、日々勉強しながら、どうしたら解決できるかを考えておりますので、ディスカッションの機会を頂きありがとうございます。」

 

中島さん:「キッカケプログラムの事業を運営している中島と申します。本日は宜しくお願い致します。自己紹介としては、これまでカタリバにジョインさせて頂く前は、新卒でメガバンクに入社するなど、今とは異なる環境にいました。しかし、どんな環境に生まれ育っても子供たちが自分自身の可能性を信じて未来を描ける社会を実現したくて、カタリバにいます。キッカケプログラムという事業を通じて社会に貢献したいと考えています。今日は、キッカケプログラムで約320名のお子さんを支援させて頂いていますが、お子さんのリアルな話を通じて、日本の社会の課題をお伝えしたいです。宜しくお願いします。」

 

戦記:「ありがとうございます。事前に送らせて頂いた1つ目のアジェンダになりますが、2020年の新型コロナ発生から2021年にかけて、困窮世帯の課題がどのように変化していったのか、ご教示頂けますと助かります。」

 

中島さん:「コロナをきっかけに、もともと一人親世帯の貧困が多いのですが、こういった家庭でパートなどの非正規雇用の方がコロナで打撃を受けています。カタリバが支援しているご家庭の2割程度は親が失業されていますし、6割程度は収入に大きな下落がありました。もともと余裕がないのが、コロナにより更に追い打ちをかけられています。カタリバとしても学びを届けていますが、教育にお金を回せない、ごはんを食べられない、衣服に回せない、生きていくのが精いっぱい、そんなご家庭が増加しています。現在でも、一度失業すると復帰するのは難しく、前ほど仕事ができない、といった状況です。この1年で何かが改善したかというと、そんなことはなく、苦しいままの状態が継続しているご家庭が多いです。」

 

戦記:「コロナで仕事のスタイルが変わりましたよね。」

 

中島さん:「コロナをきっかけに、リモートワークが進みましたよね。以前からパソコンで仕事をしていた層は仕事が増えたと思いますが、飲食業や工場勤務ですとコロナで雇用が少なくなり、リモートワークもできないことになります。保護者もパソコンのスキルを身に付けたりしないと、仕事への復帰も厳しいという現実があります。」

 

戦記:「パソコンやWiFiがないと、そもそも家庭内でリモートできませんよね。」

 

中島さん:「御指摘の通りですね。カタリバの支援対象家庭では、オンラインを実現できる資金がないところが多かったです。まずはパソコンとWiFiを届けてきましたが、それだけでは、ダメでした。保護者の方もパソコンを使えないことが問題でしたが、一番の課題は、パソコン環境をセットしても、お子さんがそれを活用して学ぼうという意欲が持てないとか、活用できないことが課題でした。お子さんがこれまでに剥奪されてきた経験のみならず、これまでの家庭文化としての蓄積がないことが大きな課題だと認識しています。」

 

三箇山さん:「厳しい現実があります。カタリバとしては、十代の子供の機会格差を減らしたいです。これまで、機会格差の原因、病巣を見てきました。これは、子供だけの支援では解決しないテーマですので、保護者向けのケアやサポートを開始しています。保護者と子供、それぞれにメンターが付き伴走することで解決する必要があります。」

 

戦記:「ありがとうございます。これがアフターコロナの現実ですね。」

 

中島さん:「大事なのは直接的な学力を上げることにフォーカスするのではなく、「学力を上げる意欲と心を育む」ことだと思います。お子さんの自己肯定感は、親子関係に大きく依存しています。保護者の心の余裕と、それに基づくお子さんとの良い関係性。これをつくることが大事ですね。これが、コロナをきっかけにオンラインで支援して見えてきました。」

 

戦記:「中学受験に熱心な保護者の場合でも、虐待をしてしまう方が増えているように思います。親自身が学力のコンプレックスがあると、我が子を愛するあまりに、子供を追い込んでしまう。この関係は困窮世帯とも似ていますね。」

 

三箇山さん:「私も中島も子育てをしています。私にも小学校低学年と未就学児の子供がいます。小学生になると親である私との会話もしっかりし始めるわけですが、うっかりすると虐待しかねない空気というのは分かります。親は我が子に期待してしまうからです。なぜできないの!、とか言いたくなるのが普通の親だと思います。このビシバシやるのと、虐待は、紙一重の関係にありますね。」

 

中島さん:「そうですよね。経済的な格差だけによるものではなく、きっかけプログラムには多種多様なご家庭が参加されています。子供に対する接し方ですが、保護者の方の劣等感から焦って接してしまうとかは典型例です。他方、同じ困窮家庭でも、のびのびと子育てしていると、お金がなくても親子で良い関係を構築できていたりします。中学受験層でも同じ問題が起きているとすると、必ずしも、お金だけの問題ではありませんね。」

 

戦記:「私は都心に住んでいることもあり、周りには富裕層が多いです。しかし、富裕層だからといって、必ずしも親子関係がうまくいくとは限りません。親子関係が悪くて、これが理由で学業に集中できない例もあります。本来お金があれば解決できる学力問題ですが、親子関係が円滑であることが大前提になると思います。コロナにより、親子で過ごす時間が増加したことから、うまくいっているご家庭とそうではないご家庭で更に格差が広がっているように思います。」

 

三箇山さん:「お金があるかどうかではなく、困ったときに愚痴を語れるママ友がいるとかが、大事ですよね。親としてのプライドが邪魔して孤立すると、お子さんへの対応がエスカレートするのでしょうね。コロナで、気軽に友達とおしゃべりできなくなりましたから。保護者の孤立が進むと虐待傾向が高まるのは間違いないと思います。」

 

戦記:「ママ友が集まると、マウンティング合戦になりませんか?」

 

三箇山さん:「なりますね(笑)。皆、正直に言えないから、孤立することになります。」

 

中島さん:「会社の同僚などに愚痴をはける友達はいるが、本当に困ったときに「助けて!」と相談できる友達は、なかなかいないものです。シングルマザーの方でも、自分と同じ境遇のシングルマザーはいなかったので相談できない、という事例が多いです。そこで、カタリバでは保護者の方にペアレントメンターをつけて、その人に助けて、と言えるようにしました。」

 

三箇山さん:「戦記さんのブログを拝見していて思いますが、ブログというのは一つの可能性があるように思います。コメントも匿名で書けますよね。だから、悩み相談もしやすいと思っています。ブログへのコメントでの書き込みには、うまくいけば悩める保護者の方が救われる方法になると思います。」

 

戦記:「私も同じ意見ですので、2つのことを実施しています。一つは、Slackを使った匿名の保護者様とのチャットサービスです。こちらでAmazonギフト券で課金させて頂いたものが、カタリバさんへの寄付金の原資になっています。これは課金しているので、匿名とはいっても荒れることなく、建設的な相談ができる場になっています。」

 

三箇山さん:「そのようですね。」

 

戦記:「もう1つは、5chの掲示板ですね。しばらく前に、私用の個別スレッドが立てられるように誘導しました。そこでは、私は徹底的にボコボコに書かれておりまして、批判されたりしています。しかし、私としては、これはこれでいいかな、と考えています。

 

というのも、1日24時間しかないのに、わざわざ私のブログを読んで頂き、その批判を5chの匿名掲示板に一生懸命に書く方って、心に闇を抱えていらっしゃるように思います。幸せな生活をしている方は、そんなことに時間使いませんから。どちらかというと、子育てに困っているか、何かしらの心の問題を抱えていらっしゃるはずです。

 

勉強スタイルについて私が悪者というか批判の対象になって、それがネタになり書き込みをしてスッキリされるならば、それはそれでいいかなと考えています。5chに一生懸命書き込みをしている方のストレスが、その方のお子さんに向かうより、私に向けられる方がましですしね。コロナで環境が大きく変わったこともあり、保護者としての様々な悩みの捌け口がなくなっているように思います。」

 

(続く)

 

 

 

 

 

★現時点の立ち位置:
・資源配分比率:中学受験90%、中学入学後10%
①公文:数学K20・国語K100で冬眠【2020年1月から】
②公文:英語KII/上位5%【2021年11月19日から】

 

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Posted by senki