コノ塾:公立高校を目指す「個別指導 コノ塾」への取材 / ①日本における公立高校受験の実態について
2022年3月1日(火)。
現在、世界的にEdTechの進化が加速しています。中学受験市場は極めてニッチな市場ですが、実は、「日本における公立高校受験市場」は大きな市場です。この市場において業界を革新するプレーヤーが出現しつつあります。
2019年11月に設立され、大型資金調達にも成功した、株式会社コノセル。「コノ塾」というブランド名で、公立高校向けの塾を展開しています。
今回、「コノ塾」を率いる田辺理(たなべ さとる)CEOに取材してきました。
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①日本における公立高校受験の実態について
戦記:「お久しぶりです。私の自宅でのランチ会以来ですね。2019年に株式会社コノセルを起業して、公立高校受験向けの塾である「コノ塾」を展開され、また大型資金調達と事業の拡大、私も投資家として拝見させて頂いて、見事だなと思っていました。」
田辺さん:「ありがとうございます。ほんと、[xx]さんとは不思議なご縁ですよね。まさか「戦記さん」としてお話をさせて頂くことになるとは(笑)。」
戦記:「不思議ですよね。私がUC Berkeley HaasのMBA Class of 2011、田辺さんがClass of 2012で、1年間、カリフォルニア大学バークレー校近くの同じ敷地内に住んで、家族ぐるみの付き合いでしたね。今回は、今年の2月に娘の中学受験を終了したばかりの教育ブロガーである戦記君として、田辺CEOへ取材させて下さい。」
田辺さん:「関心を持っていただき、光栄です。当社は「コノ塾」というブランド名で、公立中学校から、公立高校を受験される方をターゲットとした塾を展開しています。高校受験は、日本において大半の方が初めて受験という選抜プロセスに直面するイベントになります。東京には中高一貫校への中学受験という特殊なマーケットが存在するのですが、日本全国を見た場合には、とても局地的な現象です。
一方、高校は進学率が99%で、ほぼすべての方が関わることになります。ここに出てくるプレーヤーとして、中学校の先生、塾などの教育サービス、本人、保護者がいます。中学校は教育機関であると同時に、高校への橋渡しをするという観点から、本人や保護者の視点では必ずしも100%味方になるものでもありません。」
戦記:「それはそうですよね。内申点の制度がありますから。」
田辺さん:「はい。中学校は、受け持った生徒たちを確実に進学させたいというモチベーションがあります。また、学校の先生も受け持ちの40人を見ていらっしゃいますから、生徒一人ひとりをじっくりと見れるわけではありません。結果的に、そのお子様に一番合った進路をお勧めするアドバイザーとしての機能は限定されてしまいます。」
戦記:「公立中学校の場合は、在校生の学力にも大きなばらつきがあるでしょうから、そもそも、細かい指導はできませんよね。」
田辺さん:「はい。中学校の先生は進路指導だけを専門にすることは難しく、生活指導も含めた幅広い責任をお持ちです。よって、学力をどんどん伸ばしていく、という観点では、どうしても限界があります。そのため、多くのご家庭にとって進路指導のサポート役は塾がメインになります。
しかし、塾と言っても、いろいろあり、大手集団塾、個別指導チェーン、ローカル塾の3種類に大きく分類できると思います。集団塾のコンセプトは「ついてこい!」ですね。戦記さんが詳しいサピックスがまさにこれですよね。ついてこれれば、成果はでます。しかし、ついてこれなければ、成績は上がりにくい。個別指導は集団塾へのアンチテーゼといえます。あなたに合わせます。しかし、生徒に合わせるがゆえに、ストレッチさせる要素は欠ける恐れがあります。」
戦記:「確かにそうですね(笑)。」
田辺さん:「あと、個別指導はお値段的にも高いことがネックになります。5科目を個別指導でやろうとすると、少なくとも5万円以上は毎月かかります。これを払えるかどうかの勝負になります。最後に、ローカル塾は塾ごとのばらつきが大きいので、ご近所にお子様に合うところがあればラッキーという世界です。結果的に、集団塾か個別指導を選択されることが多いと思います。集団塾でついていけるならば良いですが、ついていけないと、大変というのが実態です。集団塾は合格実績で事業を伸ばす面があるので、実績を出しそうなお子様にリソースを投下して、そうでないお子様にはリソースが投下されづらいという嘆きをよく聞きます。成績が低迷してくると、通っているけど、ついていけない、という状態になってしまいます。」
戦記:「通称、お客さん、というやつですね。中学受験界においても多用される概念です。僕はあまり好きな表現ではありませんが。」
田辺さん:「個別指導は価格面に加え、先生の質のばらつきもあります。多くの先生が必要なので、プロの先生だけが見るということは成立しづらく、良い先生にあたるかという点は注意が必要かと思います。」
戦記:「個別指導は、先生1人に対して生徒さんは1-2名ですから、当然ながら良い先生の確保というものはハードルが高いでしょうね。」
田辺さん:「集団塾だとカリキュラムが合わない、部活動との両立ができないなどの問題があります。また、個別指導は高いから5科目できず、ピンポイントになってしまい、網羅的にできない。そこで、集団塾と個別指導の「いいとこどり」をできるのではないか、と考えたのが「コノ塾」というサービスの背景になります。これを全て人に任せると個別指導と同じでコストが高くなってしまいます。テクノロジーを使って、品質を担保しながら、人がやるべきところを人がやればよい、というのが、我々が考えるコンセプトとなります。
一方で、私がリクルート時代に担当していたスタディサプリや、ベネッセの進研ゼミのようなタブレット教材を渡せばそれで良いということでもありません。あくまでも、これらは教材なんです。教材を一人でやることの難しさは、古今東西を問わず、普遍的な問題です。一人で勉強するのは、本当に大変です。しかも、初めて挑戦する受験である高校受験において、一人で最後までやるのは難しい。やはり、人のサポートを受け、場所を変えて、集中的に努力をして学力を身に着ける場所は存在した方が良いだろう、と考えています。リモートワークと同じで、ずっとパソコンなりタブレットの画面を見ながら一人で
仕事をするのは辛いですよね。これと学習は全く同じです。」
戦記:「毎日リモートワークの連続だったら、きっと私は鬱になりますよ(笑)。そんなの無理です。」
田辺さん:「大人でも無理ですよね。とくに長期間は無理があります。高校受験は1年以上の時間をかけて習慣化して行うもの。全てオンラインで実施するというのは理想論としては良いのですが、現実的ではないと思います。現実解としては、人と場を用意した上で、テクノロジーも活用する。テクノロジーが得意なことはピンポイントで良い動画を見てもらうとか、問題の学習データを取るといったことになります。その上で、先生と一緒に学んでいくというのが現時点では素直な解だと考えています。そうすれば、多くの方が手の届く価格で高品質なサービスを提供できるんです。」
戦記:「個別指導が月額5万円以上だとすると、「コノ塾」さんですとおいくらなのですか?」
田辺さん:「5科目対応で月額授業料2.4万円です。お母さま方には「明朗会計」と言われています(笑)。当社は5科目やって公立高校のトップレベルに入る前提でその価格にしています。長期の休みだからもっとやって、追加で20万円とか30万円とかいうオプションはなく、夏期講習も月謝1か月分の上乗せです、という設計にして、最初から価格が見えています。お子様を2人塾に通わせてもご納得いただける料金体系にしています。」
戦記:「家計を考えた場合、リーズナブルのようですね。公立中学校からの公立高校への受験の場合は、大手塾はおいくらですか?」
田辺さん:「集団塾は、料金水準としては「コノ塾」に似ています。中1-2は、2〜3万円ですね。これに、各種オプションが追加され、年間で40-50万円くらいでしょう。「コノ塾」の場合は、これが40万円弱に収まります。個別はコマ数次第で難しいところです。週に1コマで講習をとらないと年間18万円くらい。しかし週に1回勉強するだけになってしまいます。実際には、中3だと夏までは2〜3万円/月で、夏期講習で20万円払って、さらに秋からは週4にしたので5万円、そこに冬期講習・入試対策を追加するとなるとすると、合計で60万円以上となるような計算です。
親の気持ちとして、塾の費用が読めないのはストレスだと思います。後出しじゃんけんと取られかねません。塾はスイッチングコストが大きいので、一度乗ったら降り辛いもの。ですので、明朗会計を推し進めて、価格が分かり辛い商習慣を変えたいですね。」
戦記:「中学受験においては、例えばサピックスは明朗会計の方だと思いますが、最終的な支出については保護者もそれくらいはいくよね、という感覚というか覚悟を持っているので良いとは思います。しかし、これは首都圏の特殊な市場の話であり、日本全国を対象とした塾の世界では特殊です。高校受験だとそうはいかないかもしれませんね。先が見えない、自動引き落としの恐怖というのは、親にはストレスになると思います。」
田辺さん:「自動引き落としにしても、オプションにしても、もちろん保護者に選択の余地はあるわけですが、情報の非対称性が大きい中で降りられないというのは、歪な関係だと思います。」
戦記:「日本全国で行われる公立高校受験ですが、初めて本格的な塾を活用される保護者さんも多いかと思います。」
田辺さん:「そうかもしれません。「コノ塾」は、品質は当然としても、価格体系についてもフェアであることを意識して運営しております。」
(続く)
★現時点の立ち位置:
①公文:英語KII、数学K、国語J
②英単語:パス単準1級を初回暗記中
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