『読書をする子は〇〇がすごい』(榎本博明/日経プレミアシリーズ)のレビュー

2021年05月(小6)

2021年5月10日(月)。

 

今月発売されたばかりの新刊です。

 

読書をする子は〇〇がすごい』(榎本博明/日経プレミアシリーズ)

 

結論として、読書と中学受験で求められる学力(特に国語)の因果関係を把握したい人は、読んでおいて損は無い内容です。極めてまっとうな内容がデータと共に語られています。このブログを読んでいる方は中学受験への関心が高いと思いますので、小6現役サピックス生の保護者として、本書で重要だと思った箇所を抜粋しておきます。

 

=quote=

p.49:このように言語能力を日常会話に用いる生活言語能力と抽象的思考に用いる学習言語能力に区別する視点はとても重要である。日本語を何不自由なくしゃべっていても、勉強ができない子、知的活動が苦手な子がいくらでもいることからわかるように、知的活動をする際に大事なのは学習言語能力を磨くことである。それができないと、授業についていけず、ものごとを深く考えることができない子になってしまう。

 

p.62:実際、行動遺伝学的研究を行っている心理学者の安藤寿康たちのデータをみると、知能や学業成績の50%程度は遺伝要因で決まるが、あとは家庭環境や学校環境などの環境要因によって決まってくる。

 

さらには、知能の50%は遺伝的要因で決まるといっても、知能の領域によって遺伝規定性が異なっているのは興味深い。すなわち、空間性知能に関しては遺伝要因の影響が70%程度をきわめて大きいのに対して、言語性知能に関しては遺伝の影響はわずか15%程度と非常に小さい。図形問題などは空間性知能に関するもので、文の読解や語彙の問題は言語性知能に関するものである。

 

言語性知能に関しては、遺伝の影響が15%程度と小さい代わりに、共有環境、つまり家庭環境の影響が60%弱と非常に大きくなっている。学校などの非共有環境の影響は30%弱であり、遺伝要因の2倍の数値になっているものの共有環境の半分に過ぎない。

 

ここから言えるのは、言語能力の発達に関しては、遺伝によって決まっている部分は小さく、家庭環境の影響が非常に大きいということ、しかも学校の影響よりも家庭の影響の方がはるかに大きいということである。

 

p.69:教育学者の腰越滋は、読書にかかわる家庭環境が学校での成功や読書量に影響していることを見出している。たとえば、家の蔵書が多いことが子どもの読書量の多さに関係していた。つまり、家に本がたくさんあるほど子どもは読書好きになっている。

 

p.74:その結果、読解力の高い子は、読解力の低い子よりも、未知の言葉の意味を推理する能力が高いことがわかった。読解力が高ければ、文脈をしっかり把握できるため、そこから未知の言葉の意味を読み解くことができる。ゆえに、読解力が高ければ、知らない言葉が出てきても文脈を頼りに意味を推理しながら文章を理解できるし、本を楽しむこともできる。さらに、心理学や教育学の視点から言語学習についての研究を行っているヴァーホーヴェンたちは、小学生を対象に追跡調査を行い、小学1年生の時点での語彙力の差は6年生になってもほぼ固定化されたままであることを確認している。

 

p.144:つまり、成績が良い子ほど読書時間が長いということが如実に示されている。さらには、「論理的に(筋道を立てて)考えること」が得意な子は読書時間が長いほど多く、苦手な子は読書時間が短いほど多くなっていた。

 

p.173:その結果、ゲームをする時間が長いほど、語彙力や言語的推理力に関連する言語性知能が低いことが明らかになった。また、驚くべきことに、長時間ゲームをする子どもの脳は、脳内の各組織の発達に遅れがみられることがわかった。脳画像からは、記憶や自己コントロール、やる気などを司る脳の領域における細胞の密度が低く、発達が阻害されていることが明らかになった。さらには、ゲームで長時間遊んだ後の30分~1時間ほどは、前頭前野が十分働かない状態にあり、その状態で本を読んでも理解力が低下してしまうということを示すデータも報告されている。

 

p.203:そこで、自分はあまり本を読んで来なかったし、今も本を読む習慣がないという人は、子どもと一緒に絵本や児童書を楽しむことから始めたらどうだろうか

=unquote=

 

 

・・・尚、読んでいて少々残念だったのが、「じゃあ、どうやったら読書好きになるのよ?」というソリューションに関する仮説が少ない(というか、ほぼ書いていない)無いことです。

 

共働き夫婦は忙しいので、場当たり的に本を選ぶ時間が無いし、親子で読む時間も確保し辛いっす。筆者が指摘するように、低学年のうちに読書力がほぼ決定してしまい逆転が無い世界ならば、小3終わりくらいまでの選書のプロセスは、ヨンデミーみたいなサービスにアウトソースする方が、うまく行く可能性が高いと思います。

 

(余談)

 

読書をする子は〇〇がすごい』は、「まるまるがすごい」とルビが振ってありました。このブログは、「『〇〇戦記』2022年中学受験の反省録」なので、やはり、まるまるせんき、と読むのだろうか?

 

 

 

 

★現時点の立ち位置:
・資源配分比率:中学受験90%、中学入学後10%
①公文:数学K20・国語K100で冬眠【2020年1月から】
②公文:英語JII/上位6%【2021年4月9日から】

 

にほんブログ村 受験ブログ 中学受験(本人・親)へ
にほんブログ村

 

Posted by senki