モノグサ:「Monoxer(モノグサ)」による記憶革命への取材 ②
2020年7月20日(月)。
中学受験というニッチなマーケットではありますが、このブログは100万PV/monthのOwned Mediaになりつつあります。ということで、このポジションをレバレッジし、中学受験業界をupdateする可能性を秘めたベンチャー企業へ積極的に取材しています。
モノグサ株式会社の代表取締役CEO/竹内孝太朗さんへ取材しました。「Monoxer(モノグサ)」という記憶定着アプリを開発している会社です。
連載2回目です。
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(2)暗記という行為の過去・現在・未来について
戦記:「そこで2つ目のアジェンダに入るわけですが、我々の祖先が昔から暗記としてやってきたことを、戦後に入ってから、いつのまにかやらなくなったのだと認識しています。素材は何でもよいのですが、長大な文字情報を暗記仕切るという経験を持っていると、他の暗記にも応用できると考えています。」
竹内さん:「私も同じ意見です。自分は何かを覚えられるんだ、という感覚を持てるかどうかがとても重要です。覚えるプロセスで、自分にとっての反復のタイミングやリズム、または覚えやすいゴロの感覚とか、そういった感覚を養うことが大事だと思います。我々はソフトウェアで記憶を改善させることを提案しているわけですが、記憶はその時に使ったツールに依存すると思います。文字が有るのか無いのか、紙を使うのかどうか。
私も歴史が好きなのですが、一人一人に紙と鉛筆が支給されて、値段を気にせずに使えるようになったのは戦後です。1920年までに学校では配布されていますけど、まだその時は、鉛筆も紙も、使い捨てにできるようなツールではなかったのです。つまり、現在行われている、たくさん書いて覚えるということが可能になったのは、始まって数十年にしかすぎないわけです。つまり、鉛筆と紙が記憶ツールとして君臨するなんてことは無いと考えています。
そして、今の時代にスマートフォンが登場したことにより、さらに記憶しやすくなりました。つまり、解いて覚えるという行為が劇的にしやすくなりました。記憶に関する学術論文でいうと、2008年2月15日にScienceで発表されたカーピック博士のスワヒリ語の暗記研究("The Critical Importance of Retrieval for Learning" /Jeffrey D. Karpicke, Henry L. Roediger)が有名なのですが、情報をすべて見て記憶するパターンと、片側を隠して解くというテスト形式の場合では、圧倒的に後者の方が長期記憶化するのが早かったという研究結果が出ています。つまり、解くという行為が暗記や記憶では有効なのですが、紙でこれをやろうとするとやり辛いんですよ。」
戦記:「記憶するには、入力より出力が大事、という論文ですね。紙だとやり辛いですね。特に、答え合わせの効率が超絶に悪いんですよ。」
竹内さん:「そうなんですよ!これまでの既存の紙の教材で、最も優れた記憶のための形式が公文だと思っています。公文のあの形式が、紙が到達できる限界だと私は考えています。公文の場合、すぐに採点してフィードバックし、ということができると、進捗に大きな差が出てくると思います。」
戦記:「そうですね。私も中学受験の現場にいてよく思うのですが、丸付けをする時間って、実は何にも付加価値を産んでいないんですよ。」
竹内さん:「そうなんですよね!」
戦記:「市販されているものも、塾のテキストも、大半の紙の教材が、問題の配列と答えの配列が違うんです。ですので、丸付けをするときに、別の紙に書いてある答えを探すという行為が発生します。これは、無駄中の無駄だと思います。」
竹内さん:「はい、間違いなく、無駄中の無駄です!」
戦記:「ですので、私がやったことは、真っさらなテキストを2冊買ってきて、1冊は白紙のままで、もう1冊に答えを最初から書きこんでしまうようにしました。」
竹内さん:「私も全く同じやり方です(爆笑)。我が家は子供が小1なのですが、小2から大手塾と算数塾に通わせることを考えていますが、小1の間に公文算数Fまでしっかりと終えることと、小6までの漢字をしっかりと覚えることを目標にしています。我が家は算数については最レべを小3まで買っていますが、丸付けの問題は発生することが予想されたので、2冊ずつ買っています(笑)。」
戦記:「我が家とまったく同じです(笑)。倍の値段を払ってもいいから、同じ冊子で答えを書いてくれればいいのに、と低学年時代に本気で思いました。答えを探す、というのは本当にこれはペインでしかないので、それを解消してほしいですよね、出版社の方には。紙でやろうとすると、こういう親の努力が必要になってきます。大人でも丸付けで思考が中断しますから、子供が丸付けすると、更に思考が中断するんですよ。」
竹内さん:「我が家は長女が6歳、次女が4歳なのです。4歳の方が公文の算数B教材をやっていまして、引き算と足し算をやっているのですが、引き算ばかりしていると足し算を忘れてしまいますので、私どもの会社が開発したモノグサで、足し算を復習しています。20+1から20+9のようなことをやり、次に20-1から20-9のような問題を、バーッと凄い勢いでやっています。結局、4歳の次女は、1時間で公文算数Bの50枚に相当する1,000問くらいを解くんですよ。モノグサを使うと、それくらい量をこなせちゃうんです。しかし、紙に書いて丸付けをするという公文のフォーマットだと1時間で50枚は絶対に不可能ですね。公文のフォーマットは紙の世界の究極の進化系ですが、紙である以上、あれが限界です。よって、ツールを紙からスマホに切り替えることで、圧倒的な絶対量の差が発生します。」
戦記:「紙で暗記なり問題を解くということは、答え合わせの時間とフィードバックが無駄になることが明確になりました。今後、暗記分野について、どうなっていくとお考えですか?」
竹内さん:「今、我々が話をしている主要論点は、果たして子供に間違えさせる必要はあるのか、というものです。現在、我々が目にしている紙教材の世界では間違えるということは必要なこととして存在しますが、これがソフトウェアの世界になると、解いているお子さんが解答中に、このお子さんが間違える可能性が高いぞ、ということを自動的に判定できるようになると考えています。つまり、間違えさせるということが根本的に必要なんだっけ?、という疑問が生まれます。漢字でいうと、書いている途中に間違えるかどうか分かるのです。だとしたら、間違える手前でナビゲーションをしてあげた方が、モチベーション維持や記憶定着の観点からは良いのではないかと思います。つまり、間違えることなく記憶完了まで行く、そんなことができると学習者の苦痛が減るのではないかと考えます。
なんでこんなことを想ったかと言うと、子供の保育園の運動会で気が付きました。跳び箱で跳べない場合、跳べない瞬間に補助すればいいんですよ。転ぶ必要はあまりないわけです。できなかったことは、補助されたな、ということで気が付けば良いのです。わざわざ失敗させる必要って、ないのかなと思います。
記憶って今日の昼に何を食べたかは皆さん分かるかと思いますが、情報量が多くなると、管理コストが増加します。そうすると、記憶するのが嫌になってしまいます。覚えることが多くなっても、管理コストがあがらない世界観を構築したいです。」
戦記:「口伝しかない時代は、親が子に口伝するとして、子が口伝を間違えたら親はすぐに訂正できますよね。しかし、紙の場合は、解いて解いて解いて、その後に丸付けをして間違えていることに気が付く。だとしたら、初めからサポートしてあげた方が良いのではないか、となりますね。」
竹内さん:「私も娘2人に公文をやらせていますが、ずっと横についています。ずーっとです。そして、解く瞬間を見ていて間違えたらその場で直します。私は、娘の公文プリントを間違えた状態で提出したことがありません。」
戦記:「いやー、僕とやっていることが全く同じですね(笑)。驚きました。娘が小1の5月までは、僕は隣にずっと座っていて解くたびにピーンポーンとかブッブーと言っていました(笑)。」
竹内さん:「4歳の方は、7+8みたいな計算をやっていると、通常は15と言ってくるのですが、たまに9と言ったりします。つまり、17-8とごっちゃになってるんですね。そうなりそうな鉛筆の動き方をしたら、増やしてねー、と声をかけるようにしています。すると、気が付いて15と書きます。これが、本人が9と書いて、公文教室に提出して、何日か後に採点されたものが返却されても、わけわからないですよ。全く意味がありません。つまり、間違えさせる意味が無いのです。だったら、たくさん解いた方が良いです。」
戦記:「記憶をどう定着させるかは、普遍性のある市場ですよね。基礎学力の源泉が暗記ですから。」
竹内さん:「はい、そう考えています。今の時代は、記憶力がないがしろにされていて、Googleで検索すればいいじゃんという風潮があります。これは経営者としては有難いんです(笑)。皆が、記憶は大事だと思っていたら競合他社が増えることになりますから。」
戦記:「(笑)。」
竹内さん:「戦記さんはお嬢さんにパス単をやらせていますよね。弊社も旺文社さんと組んで、パス単をコンテンツ化しています。パス単は5級から1級まで用意しています。パス単は見出し語とともに、例文があるんですよね。例文の空欄補充、見出し語、そして音は全て記憶事項として扱えますので、今は多くの方にご利用頂いています。英検は、それらをしっかり暗記することが合格のポイントだと思います。」
戦記:「英語力を獲得するのに、高いお金を投資する必要はないのですけどね。。」
竹内さん:「はい、不要ですね。しかし、世の中は、結構な金額を子供の英語に投資される方が多いです。モノグサで英検3級のコンテンツを作成済みですが、1,000個の例文と音を暗記していれば、英検3級に合格します。文章ごと丸暗記するだけなんです。6歳の娘は公文英語もやっていますが、英語G教材まで行ったので今は休眠させています。その後、英語の物語を丸暗記させるようにしています。まずは音として言えるように。何冊か全部暗記すればいいので。その後、単語の見出し語だけ暗記で英語はできるようになりますね。」
戦記:「丸暗記大事ですよね。」
竹内さん:「はい。大事ですね。数学オリンピックで入賞できるような素養がある子と、そうではない子というのは確かに存在します。しかし、記憶できない子なんて存在しません。多くの人が高い記憶力を獲得すれば幸せな人生を過ごせると私は思っています。私は『凡人は記憶しよう』と良く言っています(笑)。よく、竹内さんのお子さんは何を目指すのですか、と聞かれるのですが、モノグサがスタンダードになった時代の平均値以上を目指してほしい、と答えています。小学校配当1,006字の漢字を小1で暗記するとどれだけ凄い子なのかと思われるかもしれませんが、こんなの余裕なんですよ。ほんとうに簡単です。やり方が全てです。」
戦記:「同感です。娘も小2の秋くらいに完了しましたが、あれはやり方が全てだと思います。」
竹内さん:「そうなんですよ。本当に簡単なんですよ。なんでできないのかが、謎なんです。娘は小3まで既に記憶済みです。モノグサだと学習計画という機能がありまして、期日を決めると日次の学習を機械が決めてくれます。小3は180字の配当なんですが、音読みと訓読みにも対応できるよう45日で暗記する計画を設定しました。だいたいそれくらいで書けるようになって行きますね。100%を目指すと大変なので、90%くらいを目指しています。なので、12月までには小6まで終わりますね。娘は天才でもなんでもなく、ちゃんと正しく暗記するかどうか、というだけです。我々は『記憶を日常に』というテーマでやっていますが、これが当たり前にならないと勿体ないですよね。」
(続く)
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■追記(2020年7月22日):
当日のアメブロ「教育・お受験」ジャンルの記事ランキングで2位の記事になりました。
★現時点の立ち位置:
・資源配分比率:サピックス70%、中学入学後30%
①公文:数学K20・国語K100で冬眠【2020年1月から】
②公文:英語HII/上位45%【2020年5月13日から】
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